製造業向け3DCAD TopSolid7の建築での活用について

CAD

はじめに

 この記事はAEC and Related Tech Advent Calendar 2020の13日目の記事です。

製造業向けの3DCAD「TopSolid’Design 7.14」が2020年にリリースされ、IFCファイルのインポート/エクスポート機能が大幅に改善されたと発表がありました。

IFC import and export translators which allow you to interact efficiently with the BIM (Building Information Modeling) environment.

― TOPSOLID SAS announces the release of the new version of TopSolid 2020 (v7.14).

 IFCとの連携によりTopSolidシリーズが建築での活用が進むことが予想されます。そこで、TopSolidシリーズの建築での活用について調べてみました。

メーカー・販売店・他のユーザーが公表している情報や筆者の過去の使用経験に基づく内容となっております。CADの操作方法を説明する記事とはなっておりません。

あらかじめご了承いたたげますと幸いです。

要約

現状、得られた情報を以下の3点にまとめさせていただきます。

  • 木材の加工に利用することが可能

TopSolid’Wood、TopSolid’Camを活用することで、建具や家具などの製作に活用可能であることが示唆されます。

画像引用:TopSolid’Wood
  • 別ソフトで作成した建物のIFCデータを利用

建物のIFCデータをインポートし、詳細な店舗の内装や家具・手すり・柵などの設計を行うことが可能であることが示唆されます。

画像引用:TopSolid’Design Hint #163 – Workspaces manage
  • BIMとして活用するには工夫が必要

 建物全体のモデリングや図面化は想定されておらず、建築の図面の作成するには、準備・工夫が必要で工数がかかります。そのため、TopSolidのみで完結は難しく、建物のモデリングや図面作成は別ソフトの方が効率的と考えられます。

後述のように特に建築分野での活用が期待される「TopSolid’Wood」は日本では発売されていておらず、今後さらに活路を見出すためには情報収集や運用テスト・検証や必要と考えられます。

TopSolidシリーズ

参考

TopSolid Product Range

なぜTopSolidか

 TOPSOLID社(旧Missler Software社)が開発したTopSolid 7シリーズは以下の一覧のように3D CAD、CAMシステム、金型設計、製品情報管理システムPDM(Product Data Management)の総称です。それぞれのシステムの特徴を活かし、自動車・航空宇宙部品・プラスチック金型の設計や加工およびデータの管理など製造業に利用されております。

  • TopSolid’Design:3D CAD
  • TopSolid’Cam:3D CAM
  • TopSolid’Wood:木材産業用CAD/CAM※
  • TopSolid’Sheetmetal:板金設計
  • TopSolid’Mold:金型設計
  • TopSolid’Progress:順送プレス金型設計

TopSolid’DesignはSolidWorks社のSolidWorks、富士通のi-CAD-SX、AutodeskのInventorなどと同じミドルレンジのソフトウェアです。

シリーズの大きな特徴・コンセプトは「データの一気通貫」です。
異なるCAD・CAM・解析ソフト間でデータの変換を行うと情報の欠落や仕様の違いにより、修正や調整の手間が発生するということがあります。TopSolidシリーズでは製造に関わるシステム・データを一つに統合することで、そういった問題をなくすことができるようになっています。

※TopSolid’Woodは2020/12時点で日本で未発売です。詳細な内容についてはメーカーに確認が必要と考えられます。

TopSolid’Woodの木材の加工への利用

参考

TopSolid’Wood

 TopSolid’Woodは木材産業用のCAD/CAM ソフトウェアパッケージと紹介されています。3Dモデル・2D図面・帳票・NCデータの製造に必要な各データを作成することが可能です。

  • メーカーの特徴紹介動画
動画引用:Why TopSolid’Wood?
  • フランスのBonnardel社の活用事例

 Bonnardel社は大工仕事から家具、オーダーメイド家具の製造まで、ボナルデルは幅広いサービスを提供しており、競技場・美術館・空港など規模の大きいプロジェクトの建築・改修を手掛けています。5軸加工が必要な複雑な形状にTopSolid’Woodで対応できることもプロジェクト達成の一つのポイントとなったようです。

画像引用:Bonnardel’s fitting projects excel thanks to TopSolid’Wood

その他の活用

その他活用できそうな特徴や機能についてです。

  • IFCデータの利用

 TopSolid’DesignはIFCデータのインポート/エクスポートに対応しています。壁・柱・梁などの建築部材を作成するための専用コマンドは備わっていないため、日本ですでに普及しているBIMソフトのRevitやArchiCADなどと同等にモデリングすることは現状難しいと考えられます。他のBIMソフトから支給されたIFCデータを活かして手すり・柵・窓枠の詳細な部分のモデリングなどに利用できる可能性は0ではないと考えられます。

建物のIFCデータをTopSolid’Designへインポートし、建物のモデルを参照しながら手すりを作成しています。手すりのモデルに属性情報を入力し、IFCへエクスポートし、IFCモデルビューア「BIMVision」で確認しています。

動画引用:Travailler avec les IFC (BIM) – TopSolid’Steel
  • Workspaces manager

 Workspaces managerは複数人で同時に共同する編集のための機能です。モデル全体を複数の領域に分け、作業を分担することが可能です。建築モデルを扱う上で有用と考えられますが、実運用で活用するにはこの機能をTopSolid’Designのどのような作業に運用・活用するか一歩踏み込んだ検討が必要になってくると考えられます。

動画引用:TopSolid’Design Hint #163 – Workspaces manager
  • マルチドラフト機能

 TopSolid’Designにはマルチドラフトと呼ばれる図面一括作成機能があります。あらかじめ投影図を配置した図面テンプレートを用意しておくことで、複数の図面の一括出力が可能です。

動画引用:TopSolid’Wood multi-draft

まとめ

  • TopSolid’Woodの木材の加工への利用

 木材の加工についてはすでに日本で提供されているCADデータを入稿し、製造できる「Emarf」もあり、木材の加工へのデジタルデータの活用が進んでいると考えられます。TopSolid’Woodが日本市場にリリースされる場合は、CAD/CAMデータから上記の事例のように日本でもオーダーメイドの木造製品や複雑な形状を製造することができユーザーの選択肢が広がることが期待されます。

  • BIMとして活用するには工夫が必要

 上記のようにTopSolidシリーズにはいくつかの有効なソフトや機能があり、部分最適化は見込めますが、全体的な作業の効率化を図るためにはまだ検討・検証が必要と考えられます。上述のように現状ではBIMソフトと同等の効率での建物全体のモデリングは難しいため、作業全体の効率を考慮すると他のソフトから支給されるIFCデータを利用し、詳細部分の設計や製造での活用が見込まれます。
 また、メーカーが日本の建築向けにアプリを開発を進めているのか、メーカーの動向も伺っていく必要があると考えられます。